元税関職員が語る、成田空港(旅具部門)での仕事と一日の過ごし方

こんにちは、元国家公務員(税関職員)の相原 ユーキです。

僕は2016年の4月に新卒で財務省東京税関に入関し、同年12月末まで成田国際空港にて検査・徴税業務に従事していました。

……と言っても、ほとんどの人は税関職員が普段どのような仕事をしているのか、どのようなシフトで働いているのかを知らないと思います。

そこで今回の記事では、元税関職員の僕が(守秘義務に触れないように気をつけながら)税関職員の一日を赤裸々に語っていきます。

税関をやめてブログを書く人はおそらく僕ぐらいなので、なかなかレアな情報かもしれません(笑)。それではまいりましょう。

そもそも税関職員って何をやってるの?という人へ解説

「税関で働いていた」と言われても、いまいちピンとこない人も多いはず。そこで以下、税関という組織のことについて少しだけ説明させていただければと思います。

税関という組織

まず、税関職員は国家公務員なので、国家公務員(一般職)試験に合格する必要があります。その後、官庁訪問という選考プロセスを経てはじめて税関職員として働くことになります。

税関は、財務省の地方支分部局に属する組織。ですので、税関職員は「財務省職員」であり、共済も「財務省共済組合」に入ります。

函館・東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・門司・長崎・沖縄の9つの都道府県に税関があり、空港とか港とか、色々なところで働いています。

税関の3つの使命

税関は次の3つを「使命」として掲げていて、付随する業務をおこなっています。

  • 適正かつ公平な関税等の徴収
  • 安全・安心な社会の実現
  • 貿易の円滑化
  • 出典:http://www.customs.go.jp/zeikan/yakuwari.htm

ものすごく簡単に言うと、1.お金を取ったり 2.水際で密輸等を防いだり 3.貿易のシステム開発をしたり という感じで、けっこう業務の幅が広いです。

ちなみによく知られている「空港での税関検査」は、一つ目と二つ目の使命を果たすべく行われていますのでご協力を ……。

 

よくある質問

入管とはどう違う?

ちなみに入管(入国管理局)は「法務省」の管轄なので税関とは別物です。彼らがチェックするのは旅客の渡航歴や出で立ち。僕たちに馴染みのある仕事では、パスポートへの押印(入出国のスタンプ)があるでしょう。

税関では携帯品や身体の検査、徴税業務、通関手続き(カルネ通関、ワシントン条約該当物品 ……)まで行います。もちろんパスポートも見ますが、データを照会したり何かを書き込んだりすることはありません。

空港にいると入管職員と仕事で関わることもありましたが、カラーがけっこう違って面白いです(税関はオラオラ系の人が多いですが、入管は文系っぽい人が多いと感じました)。

保安検査とはどう違う?

飛行機に搭乗する前に、保安検査ってありますよね。ノートPCとかスマホをトレイに乗せて、ゲートの中をくぐるやつ。

意外と知られていませんが、あれは実は税関ではなくて民間の警備会社(株式会社JSSとか)によって行われています。今度注意深く制服や腕章を見てみてください。

 

税関職員(成田勤務)の働き方

僕は、入省後ただちに行われる、2ヶ月半に及ぶ税関研修(柏の葉)を終えたあと、成田税関支署の旅具(=旅行用具)通関部門という部署に配属になりました。このように最初の配属で空港勤務になる職員が多いです。

以下では、税関職員が実際にどのような働き方をするのかをご紹介します。班制とかシフトとか、そういうお話です。

空港勤務の税関職員はそれぞれ班に所属

僕は成田国際空港の第2ターミナルビルで検査官として働いていました(2ビルだけでなく、1ビルにも3ビルにも税関職員はいます)。語学が得意だと2ビルという基準があると聞きましたが、振り分け基準はあくまでもブラックボックスです。

それぞれのビルごとに「班」が組織されていて、新人は一人ずつどこかの班に配属されることになります(僕の班は12班あるうちの一つで、10人体制でした)。

班のメンバーの役職は、上から統括監視官、上席監視官x2、監視官x2~3、検査官x4。どこの班でもおそらくこのようなバランスで組織されているはず。班のメンバーは基本的に固定ですが、異動でメンバーが入れ替わったりすることもあります。

班ごとに10〜12日サイクルのシフトを回す

空港勤務の税関職員は、9時ー17時固定の働き方ではなく、一定期間で1周するサイクル(シフト)に従って勤務することになります。例えば次のような感じです(あくまで一例)。

  1. 当直
  2. 当直明け
  3. 免休(オフ)
  4. 日勤
  5. 当直
  6. 当直明け
  7. 免休(オフ)
  8. 免休(オフ)
  9. 日勤
  10. 当直
  11. 当直明け
  12. 免休(オフ)
  13. ビルによって異なります。上記はあくまでも1サイクルのイメージ。

当直勤務は、午前中から働きはじめて、夜仮眠をとり、次の日の昼前まで働くシフトです。1サイクルにだいたい3回ぐらい入ってきます。当直勤務にも3種類あって、それぞれ始業時間、終業時間、勤務内容が異なっています。

日勤は1サイクルに3回ほどあります。9時ー17時という日もあれば、12時ー21時という日もあったりとバラバラ。日勤では「検査官」として検査場に立つことがほとんどです。

免休(めんきゅう)とはオフのことです。カレンダー通りの働き方ではないので、平日にもガンガン免休がやってきます。一般の人と行動が被らないのでかなり快適でした。

また、当直明けの日は午前中には帰宅できるので、明け → 免休 → 免休 は擬似的な3連休になります。毎サイクル必ず3連休がくるので、意外とハードではないと思います。

メインの仕事は、到着ロビー手前での「検査」

空港での税関検査は、海外から入国する外国人旅客や帰国する日本人旅客を対象として行われます。

帰国の流れは、飛行機から降りて → 入管で入国審査 → 税関で携帯品検査 → 到着ロビーへ という感じになっています。

基本的にはパスポートと申告書を提示していただき、いくつか質疑応答をして、パスポートを返却して終了です。場合によってはスーツケースを開けたり、身辺検査をしたり、別室で携行品をガスクロマトグラフィー検査したりすることもあります。

どの旅客を検査するのかは、決まっている場合もあれば、決まっていない場合もあります(これは機密情報なのでこれ以上は書けません)。ただ、税関職員の指示には素直に従ったほうが双方時間をロスせずに済みますよ!

ちなみに、高城剛さんが著書『LIFE PACKING2.1―未来を生きるためのモノと知恵―』の中で

……なにより、海外旅行となると、税関検査を突破しなければならないワケで、さすがに手ぶらが怪しいにもほどがあります(経験談)。こんな時こそスーツを着用。これで税関検査のハードルもグッと下がりました。

と書いています。滞在国、滞在期間と照らし合わせて、明らかに荷物が少ない場合は、税関職員の目からするとやはり怪しんでしまいますね(笑)。ミニマリストの方は要注意です。

 

税関職員(成田空港勤務)の一日 -当直パターン-

ここでは、ワークサイクルの中の「当直」の一日を再現してみようと思います。出勤から退勤までは、以下のような流れになっています。

ところどころボカしていること、そして僕の記憶に誤りがある可能性があることはあらかじめご了承ください。

08:45 成田空港到着
09:00 出勤、準備(時間外)
11:00 勤務スタート、パーサー/検査業務
13:00 昼休憩
13:30 パーサー/検査業務
18:00 夕食休憩
19:00 パーサー/検査業務
23:00 検査場の片付け、鍵閉め等
24:00 シャワー、仮眠
05:00 起床、検査場のスタンバイ
06:00 朝食休憩
06:30 パーサー/検査業務
09:00 引き継ぎ、退勤
10:00 帰宅
時間はその日によります。ざっくりとしたイメージで捉えてください。

08:45 成田空港到着

税関職員に限らず、成田空港に勤務する人の多くは千葉県の成田市に住んでいます。空港までは1〜2駅ですし、家賃も安いので、街へ出ることが少ない人にとっては天国です。

基本的には私服で通勤し、成田空港の通用口(セキュリティあり)から税関専用の更衣室に入って、ロッカーにしまってある税関の制服に着替えます。夏:特製の開襟シャツ、制服ズボン、官帽 / 冬:シャツ、ネクタイ、制服上下、官帽を着用。

着替え終わると、関係者通路を通り、さらに税関専用の通用口(セキュリティあり)から税関支署へと向かいます。

09:00 出勤、準備(時間外)

今にして思えば謎ですが、班の下っ端新人は定時よりも2時間早く出勤しなければなりません。何をするのかというと、「配置表*」というエクセルファイルを作成したり、メールのチェックをしたり ……という雑務です。

*ちなみに「配置表」とは、どの税関職員がどの時間帯に検査場へ出るのかを指示するための表のことで、これを間違うとけっこう大変なことになります。

民間企業では出退勤のタイムカードは電子的に行われることが多いですが、税関では超アナログ。馬鹿でかい横長の紙が職員の人数分あり、出勤する度に自分の個人ページにハンコを手押ししていきます(万が一押し間違うと、紙ごと差し替えになります)。

定時(11:00)までに班の先輩や上司に「税関手帳(通称:黒手帳)」という、警察手帳的なものを手渡しで配っていくという仕事もあります。そう考えるとかなり縦社会だよなーと今では思います。

11:00 勤務スタート、パーサー/検査業務

下っ端は早くに出勤しますが、偉い人は時間ギリギリにやってきます。全員が揃うと、10分程度の始業ミーティングが行われます。ここでは直近の摘発事例とか、その日の重点検査の方針とか、かなり機密性の高い情報が共有されます。

ミーティングが終わると持ち場へ向かいます。税関職員のメインの業務は「検査官」として行う検査業務ですが、これに専念するのは基本的に日勤のとき。当直勤務の時は「パーサーカウンター*」というブースにどしっと構えて担当業務につくことになります。

*パーサーカウンターとは、到着ゲートへ続く自動ドアのすぐ「横側」に位置しているブースのことです。海外旅行に頻繁に行く人ならイメージつきますかね。

成田空港の税関検査場はAゾーンとBゾーン(メインゾーン/サブゾーン)の2つに分かれていますが、到着便の到着ゲートをABどちら側のゾーンに流すのかを決めるのがパーサーの業務です。また、税関エリアで発見された遺失物の対応やカルネ通関、クレーム処理なんかもパーサーが行います。

他の税関職員がスムーズに検査を行うための「総合的な場内整備」というイメージでしょうか。当直班は「司令塔」的なポジションに当たるため、終日かなり慌ただしくなります。

ちなみに、パーサーのヘルプ(パーヘル)を担当する場合と、終日検査を行う場合の2パターンがあります。パーヘルなら上記の仕事を補佐。検査担当なら一日中旅客の検査をします。

検査官は一日中立ちっぱなしで辛いと思われますが、実際は15分検査して15分休む、といったサイクルを延々と回していく感じなんですよ。このサイクルを半舷(はんげん)と呼んでいて、「15分半舷」とか「20分半舷」といったような用語が飛び交います。

13:00 昼休憩

班の中で、順次、昼休憩をローテーションしていきます。お弁当を作って持ってくる職員、制服のまま外食をする職員等、さまざまです。僕はビルに入っているセブンイレブンでお弁当を買って税関支署の「待機室」という部屋で食べたり、吉野家でささっと済ませたりしていました。

休憩中は基本的に何をしても自由なので、同僚と駄弁ったり、スマホを見たり、関税法とか英語の勉強したりしていました。ただ、待機室にいると電話を取らなければならないので、僕は外のベンチに座っていることが多かったです。

13:30 パーサー/検査業務

休憩を終えると、再び持ち場に戻ります。業務内容は終日同じような感じですね。余談ですが、先ほどから登場している「カルネ通関」とは

ATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)に基づき、職業用具、商品見本、展示会への出品物などの物品を外国へ一時的に持ち込む場合、外国の税関で免税扱いの一時輸入通関が手軽にできる通関手帳
出典:https://jcaa.or.jp/carnet-j/1.html

のことです。カルネで通すのは「カメラ機材」とか「計測器」が多かったですね。

18:00 夕食休憩

夕方にも休憩があります。休憩を何分間とるのかは基本的に上司の指示に従うことになっていて、あまりにも忙しい日には、後にずれ込んだり、最悪スキップされることもありました。

税関の職場では時間外労働がけっこう常態化していて、僕は色々と気になりましたね。業務じたいが特殊なので致し方ない部分もありますが ……。

18:45 パーサー/検査業務

夕食休憩を終えると、再びパーサーカウンターへ。怒涛のような業務も次第に落ち着いてきて「ああ、今日も一日が終わるなあ」という感覚になってくるのがこのぐらいの時間帯。

各検査ブースから集められてくる「税関申告書(縦長の黄色いカード)」を束ねたり、書類を仕分けしたり、サブゾーンを閉めたりしながら締め(クローズ)に向けて作業をしていきます。

23:00 検査場の片付け、鍵閉め等

最終便が到着し、旅客全員の検査業務が終了すると、メインゾーンの締め作業に入ります。締め終われば、検査場を後にして待機室および事務室へと戻ります。特に事件等がなければ、そのまま更衣室へ。

24:00 シャワー、仮眠

ロッカーに制服をしまい、大浴場でシャワーを浴びます。大浴場には湯船が一つと、仕切りのついたシャワースペース(立ち)が四つ程。僕の班の統括は湯船に浸かるのが好きな方だったので、あらかじめお湯を張っておくのが常でした。

シャワーから上がり、寝巻きに着替えて、歯磨きとドライヤーを済ませたら仮眠室へ。仮眠室には2段ベッドが数十台置かれていて、自分のスペース(ベッドの番号、上か下か)はあらかじめ割り当てられています。

ベッドは職員の人数分あるわけではなく、他の班の当直班と共用します(サイクルがずれるため、仮眠がかぶることはありません)。自分専用のシーツをベッドに敷いて仮眠を取ります。

事件等なくスムーズに業務が進めば、日付が変わるか変わらないかぐらいの時間帯には眠りにつくことができます。事件やトラブルがあれば初動捜査等が入るため、2時、3時とずれ込んだり、最悪の場合は完徹になることもたまにあります。

統括監視官なんて50〜60代なのに、新卒の若者と同じサイクルをこなしていてすごいなーとよく思ったものです。世代の違う職員が洗面所で横に並んで歯磨きをしているのはなんだか不思議な光景ですよね。

04:30 起床、検査場のスタンバイ

当直班の下っ端は、誰よりも早く起きて検査場のオープン準備をします。ここで、「いかに音を鳴らさずに朝起きるか」が重要になってきます。スマホのアラームを鳴らすと、まだ寝ている諸先輩方を起こしてしまうからです。

僕は朝がとにかく弱かったから、このためにApple Watchを購入しました。Watchなら、音を鳴らさずに「手首の振動」だけで朝バッチリと起きれるので重宝したのです。

06:00 朝食休憩

オープン作業が終われば、始発の便が到着するまではやることがなくなるため朝食休憩です。 ……考えてみれば、1回の当直勤務で3回も外食をするのだから意外とコストがかさむんですよね。朝のぼんやりとした意識で、同僚と話しながらおにぎりやサラダを食べます。

当直勤務は各サイクルで3回。つまり、成田支署にある12班のうち、自分の班を含めた3つの班は当直の度に一緒になるんです(他の2班のことを「裏班」と呼んでいます)。

一緒に当直サイクルをこなしていくうちに「一体感」みたいなものが生まれます。そのため裏班とは仲良くなりやすいですね。僕は裏班の上席監視官に親しくしていただき、オフの日に一緒にロードバイクで成田市内を走りに行ったこともありました。良い思い出です。

06:30 パーサー/検査業務

朝食を済ませると、検査場へ出て業務につきます。やることは基本的に前日と同じですが、朝の9時ごろには次の当直班がパーサーカウンターにつくため、引き継ぎの資料等を準備しておきます。

09:00 引き継ぎ、退勤

次の当直班への引き継ぎを済ませて、検査場を後にします。このときの開放感は、なかなか形容できないほどでした。終業ミーティングで情報共有し、班のメンバー全員の黒手帳を回収。厳重な金庫の中に手帳をしまって、退勤印を押して退勤します。

ロッカーで着替えて済ませて、京成線で成田駅まで1駅。直近の先輩(1歳上)も成田市内に住んでいたので、一緒に帰ることが多かったです。成田駅前にある餃子の王将やラーメンをご馳走になってから帰宅することもありました。

10:00 帰宅

だいたい午前10時ごろには帰宅できます。言い忘れていましたが、僕は成田市内にある「東京税関 成田寮」という宿舎に住んでいました。9畳、和室、築数十年で衛生状態は非常に悪かったのですが、家賃が月に9000円しかかからないのが魅力でした。

仮眠は取ったものの、当直明けはやはり少し疲れているので、ここで油断すると夕方まで寝てしまいます。僕は当時英検の勉強をしていたので、成田市内のボンベルタというスーパーに入っているスターバックスでガリガリと作業をしていました。

夜になるとロードバイクで成田市内を走ったり、無駄にネットカフェ(快活クラブ)で外泊したりと、結構好き勝手な生活を送っていて、今思えば楽しかったです。

基本給は17万円ほどでしたが、勤務サイクルが特殊だったから休日出勤手当とか時間外手当が相当ついていて、1年目でも手取りで27〜28ぐらいはあったと思います。家賃が異常に安いこともあって、手取りのほとんどが可処分所得に。

僕はお金があると使い尽くしてしまうタイプなので、毎月高額な買い物をしていました。 ……お給料とかボーナスの話はまた別の記事にて。

税関という特殊な組織に中にいた僕が、当時の仕事や一日の過ごし方を可能な限り赤裸々に語ってみました。雑談のネタにでも使っていただければ幸いです。

それでは、また。