こんにちは、相原 有希です。
フィリピン・セブ島での1ヶ月の留学を終えたあと、このまま日本に帰るのはもったいないと考え、ベトナムのサイゴン(現ホーチミン)に1週間弱滞在していました。
サイゴンでの生活の様子はまた別の記事にて紹介するとして、今回は、サイゴン〜首都ハノイを南北に結ぶ鉄道の旅を写真付きでお送りしようと思います。
ベトナム南北統一鉄道の基本情報
運 営 体:VNR (Vietnam Railways)
停 車 駅:ハノイ〜サイゴン(ホーチミン)まで
総 距 離:約1600km
時 間:33時間30分
料 金:後述
以上が、最低限知っておいていただきたい情報です。
小さい国だとばかり考えていましたが、実は国土を南北に大きく広げているベトナム。第二の都市サイゴン(ホーチミン)から首都ハノイまでの電車の旅をお届けします。
鉄道の旅を写真付きでレポート
前夜(2018年10月3日)
「サイゴンからハノイまで電車で縦断したい」と、そんな風に漠然と考えてはいたものの、重い腰を上げて行動に移したのは出発の前夜でした。
本来であればVNRのホームページからオンライン予約・決済が行なえるはずなのに、何故かデビットカードが弾かれてしまって、仕方なくサイゴン鉄道駅 Saigon Railway Stationまで直接足を運んだのです。
駅についてチケット販売窓口にてハノイ行きの鉄道(明日の始発)に乗りたい旨を伝えても、英語が伝わらないせいか一向に要領を得ず、インフォメーションカウンターに回されてしまう。ところがそちらでは販売窓口に行くように促される。
そんな風にたらい回しに遭いながら、ようやくチケットを購入することができました(下の写真がボーディングパス)。
料金は「どのランクの車両に乗るのか」で明確に異なってきます。詳しくは以下参照。
- 寝台(4人部屋):1,401,000VND = 7,005JPY
- 寝台(6人部屋):1,112,000VND = 5,560JPY
- 座席(ソフトシート、電源あり):817,000VND = 4,850JPY
- 座席(ハードシート、電源なし):601,000VND = 3,050JPY
僕は一番安い「ハードシート席」を選択。快適さを取ることもできましたが… 敢えてちょっと無茶な旅をしてみたかったのです。
ですが、結論から言うと格安席で良かった! これも後述します。
当日(2018年10月4日)
朝6時出発の始発電車のため、当日は朝4:30起き。5時前にはホステルを引き払い、バックパックを背負いながら駅まで45分ほど歩きました。
ホステルの深夜〜早朝番のスタッフが僕のパスポートを探すのに苦労していたせいで予定出発時刻をややオーバーしましたが…やめておきます。
サイゴン鉄道駅の敷地内には、まだ5時代だと言うのに多くのタクシーやバイク(Grab)が列をなしています。方向音痴の僕ですが、駅に向かうバイクの後を追うだけでまっすぐ駅に着けたのはラッキーでした。
GA SAI GON サイゴン駅。ちなみにハノイ駅は「GA HA NOI」なので、恐らくこの「GA」というのが「駅」を指すベトナム語なのでしょう。
サイゴン駅を入ってすぐ左手には、サークルKが。ベトナムにはファミマ、ミニストップ、サークルKが異様に多いです。
車内販売があるのかどうかすら分かってなかった僕は、念のためバナナ1本とクロワッサン一袋と1.5リッターの水を購入。レシートは捨てちゃいましたが、全部合わせても300円ぐらいだと思います。
搭乗ゲートには駅員がひとり。自動改札機があって、前日に発券された搭乗券に印字されているQRコードを読み取る方式でした。ところどころ日本より進んでいたりします。
こちらがハノイ行き南北統一鉄道の始発便SE8。
この電車では最後尾車両ほどグレードの高い座席(寝台)になっています。格安席の僕は先頭に向けてひたすらホームを歩いていきました。
ガチャリと重たい扉を開け、これから30時間以上過ごすことになる我が車両に入ります。まず目に飛び込んでくるのが、硬木をあしらったに違いない座席の質感。背もたれはきっちり90度。「ハードシート」とは聞いてましたが…
自分の座席番号を探して立ち止まると、そこには名称のわからない弦楽器を構えるおじいさんが。日本だったら絶対に自分からは関わらないと思いますが(笑)、せっかくベトナムにいるのだからと、景気付けに一曲奏でてもらいました。
腕前の良し悪しは僕にはわかりませんが、異国情緒あふれる弦の音と、ころりころりと節を回すおじいさんの歌声に何だかジーンとしてしまいます。
お隣の4人がけシートにはご家族も。後でまたお話ししますが、こちらのご一家は終始僕に親切ししてくださいました。何やらベトナム語で話しかけてくれたり、食べ物を恵んでくれたり。会話らしい会話はできませんでしたが、このやり取りは一生忘れられません。
車内の「座席番号」というものは日本ほどは厳密ではなく、隣が空いている時にはみんな容赦無く横になります。楽器弾きのおじいちゃんは空いている席を見つけては座り…という風に、終始車内をうろうろしていました。
ちなみに、この鉄道に乗り慣れている現地人は「茣蓙(ござ)」のような敷物を持参して、それを座席の真下の(足元の)スペースに敷いて横になったりします。そうすることで、他の人が(写真のように)座席に横たわれるというわけです。
僕もたまたま一人だったので、窓に背をつけて足を伸ばしてリラックス。このようにこまめに体勢を変えられたおかげか、肉体的な疲労は予想していたよりもずっと(というかほとんど)ありませんでした。
時刻が11時を回ったころ、駅員さんが何やら声をかけながら通路を進んできます。「何だろう?」とまじまじと見ていると、箸を口に運ぶジェスチャー。「あぁ、食事のことか」とわかり、値段を聞いてみました。
「サーティファイブ」と駅員さん。35.000VNDか。ということは日本円では175円程度。駅弁が一食100円台ならば相当安いな。ということで現金にて支払い(クレカ使えないので注意)。引換券を渡されました。
ほどなくして、今度は小柄な女性ほどの高さもある重厚なカートで食事が運ばれてきます。先ほどの半券を渡すと、なかなか食べ応えのありそうなプレートが渡されました。
気になって他の人のプレートも覗き込みましたが、メインディッシュには実はバリエーションがありそうでした。僕は特に注文したわけではありませんでしたが、最初から最後までチキン縛りでした。日本人はポークを食べないという認識なのでしょうか?
食事の内容は、白米、チキン炒め、もやし炒め、七草スープ(ビニール袋入)と質素ですが、良い意味で日本ぽい味付けで箸が進みました。独特な香辛料(パクチー等)は使われておらず、万人に喜ばれる味だと感じます。
食後のタイミングで今度はヨーグルトの車内販売が。値段は10.000VDN(50円)程度だったため迷わず買ってみました。何の変哲も無い普通のヨーグルトでしたが、電車の旅をしているという効果のせいか、味は格別でした。
こんな感じで、33時間の移動中に合計3食(初日ランチ、ディナー、翌日ランチ)を車内販売で済ませることに。事前に買っておいたサークルKのパンは、隙間隙間で消費していきました。
また、これはまったく予想していなかったことでしたが、席で隣り合わせたベトナム人の方々に色々と食べ物を恵んでいただきました。上の写真はヤングコーン。丸々1本分けていただき、もしゃもしゃと平らげました。
その他にも(写真は載せていませんが)あまじょっぱい煎餅やら、ジャム入りの菓子パンやら、韓国製のスナックやら、食後のゼリーやら…「何もそこまで」というぐらいに好遇していただいたことが本当に印象的です。
会話らしい会話も特にできなかったんですけどね。ベトナム語でガーッと話しかけられても僕にはまったく理解できないから、ぽかーんとして微笑むしかない。そんな様子を見て、豪快に笑って、また話しかけてくれる。その繰り返し。
旅人感丸出し、日本人感丸出しで放っておけなかったのでしょうか。確かに車両の中で異邦人は見たところ僕一人でしたし、少なからず興味を持っていただけたのでしょう。何にしてもこれほど嬉しいことはありません。
ピントがずれてしまっていますが、向かいに座ったお子さんとお母さん、おばあちゃんの3世代を撮影。こういう出会いがあるから、旅は楽しいのだとつくづく感じました。そして「寝台席にしなくて正解だったのかな」などと今では思います。
心の底がじんわりと温まるのを感じながら、眠りに就きました。(時刻は23時ごろ、出発から17時間経過、残り16時間)
翌日(2018年10月5日)
身を揺すられて目を覚ましました。時計を見ると時間は6時を回ったところ。出発からちょうど丸1日が経った朝でした。
頭と視界がクリアにならないうちに辺りを見回すと、昨晩写真を撮らせてくれた子供とお母さんたちが荷物をまとめ終わり、席を立って電車を降りるところでした。
「起こしてごめんね。ハノイまで行くのかい?」
「はい、皆さんはこちらの駅で降りられるんですか?」
「そうだよ」
「色々と良くしていただきありがとうございました」
「いいんだよ、気をつけてね」
言葉は依然としてわかりませんが、お互いの意図は不思議とすんなり理解できた気がします。
見送ってから、もっとしっかりとお礼を言うべきだったんじゃないかと少し悔やまれましたが、名残惜しいぐらいがちょうど良いと思うことにしました。
地図を見ると電車は知らぬ間にずいぶんと歩を進めていて、ベトナムとラオスの国境に沿いながら調子よく北上しているところでした。
渓谷地帯に差し掛かっており、切り立った崖と、その麓に点在する廟(墓?)のようなものが目に入ります。
ベトナムでは大部分が仏教徒とのことですが、不勉強のため写真の廟がどの宗派に属するのかが判然としません。反り返ったデザインとドギツイ色使いがいかにも異国風で少し「怖さ」を覚えてしまいました。
そういえば、車内には数時間ごとに清掃が入ります。と言うと聞こえは良いですが、実際には竹ぼうきで(乱雑に)床を掃いていくだけです。こんな風に全てにおいて「大味」ですが、これこそが東南アジア旅の醍醐味だと言えるほどには図太くなりました。
3度目の食事(ランチ)。内容物は毎回ほとんど代わり映えしませんが、飽きることなく楽しむことができました。次回この電車にまた乗ることがあれば、チキンではなくポークをオーダーしようと密かに考えています。
そういえば、終点ハノイから2時間ぐらい手前の駅で、西洋人男性とアジア系女性のカップルが乗り込んできました。正直言うと、車内はヨーロッパ人で溢れかえっているものとばかり想像していたんですが…。
最初は、ベトナム人の彼女が西洋人の彼氏を地元に連れてきて観光しているのだと思っていました。しかし、現地のおばさんが二人に話しかけても二人は顔を見合わせて首を横に振って苦笑い。
もしやと思い、頃合いを見て「Do you speak English?」と尋ねてみると「Yes!」と。聞けば、男性はアメリカ人で女性は中国人。二人は現在ロンドンの大学で同級生なのだそう。バリバリのネイティブスピーカーでした。
僕が日本人だと言うと「普通に出で立ちで分かる(笑)」と少しいじられ、仲良くなり、それから色々と話をしました。これまでどこにいたのか、これからどうするのか、日本はどういう国なのか、京都はどういう街なのか、ベトナムの人々をどう思うか。
特に最後の質問に関しては、僕がこの電車の旅で感じたことそのままで、ベトナム人は本当に親切だと(まるで自分のことかのように)熱弁してしまいましたが、彼らも同様に感じていたようです。
どれぐらいハノイに滞在するのかと二人に聞くと、今日がベトナム旅行の最終日で、明日のフライトでロンドンに帰るのだそう。「今晩近くのジャズバーに行くんだけど良かったどう?」と誘ってくれましたが、予定がどうしても合わず断念。
「日本に来る際には是非連絡するね」「UKに行く際には声をかけます」とFacebookのアカウントを交換して別れました。行きずりで仲良くなった人との「去り際」は悩ましいものですが、これぐらいあっさりしているのもかえって良いものです。
このようにして、10月4日早朝6:00時にサイゴン(ホーチミン)を出発した鉄道は、翌10月5日の15:40すぎに首都ハノイに到着しました。総移動時間は33時間40分、移動距離は1600kmオーバー。
いざ旅を終えてみて最初に頭に浮かぶのは、「過酷だった」というネガティブなものではなく、純粋に「楽しかった」という感想です。シートの硬さも、バッテリー切れの恐怖も、トイレの汚さも、どれも取るに足らないダウンサイドでした。
むしろ、色々な人と長い時間を過ごして、会話をして、思いやりに触れて… 生涯きっと忘れないであろう体験を手にすることができましたから。
最後に
この記事の締めくくりとして、この先「ベトナム南北統一鉄道」で旅をする日本人の方にいくつかアドバイスをさせていただければと思います。
- 飛行機では味わえない「距離感覚」を楽しめる人に、この旅はオススメ
- ベトナム語を勉強すればコミュニケーションの幅が広がるけど、喋れなくても通じるものはある
- クレジットカードは一切使えないので、3〜4食分のお金(160,000VND = 800JPY)は現金で用意すべき
- トイレに紙は置いていないので、トイレットペーパー1ロールは持参すべき
- 車内はエアコンが効いていて肌寒いので、上着を持参するのが良いかも
- 木製の座席はお尻を傷める可能性があるので、クッションやマットがあれば尚良し
- 茣蓙や敷物があれば床に寝ることができるので一考の余地あり
以上です。
追記:
冒頭でもチラッと書きましたが、ハードシート席には電源(コンセント)がありません。ですので、移動中にスマホやラップトップを使用したい方は注意が必要です(陸の孤島です)。
ちなみに僕は「iPhone SE」をMacBook Proに繋いで合計3回満充電しました。ハノイについた時点でMacBookのバッテリーはまだ32%残っていたので、モバイルバッテリーを持っていない方はラップトップから給電してやりくりしましょう!
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